565 みず象が

『みず』

象が水辺で水を飲んでいました。
そこへ麒麟が来て言いました。


「象さん、こんなところで会えて、
 とっても嬉しいよ」


それは、象の気持ちでした。
麒麟は続けて言いました。


「象さん、君は僕にとっての林檎だよ」


象は、何が何だか分かりませんでした。


「林檎はなかなか食べられないんだ。
 だから、たまに食べることができると、
 とっても幸せな気持ちになるんだよ」


そう言い残すと、
麒麟は仲間の元へと帰って行きました。


麒麟は毎日水を飲みます。
象も毎日水を飲みます。


象は思いました。
僕、水になりたいよ。
毎日、君に会いたいよ。



そうして象は、
水よりも少しだけしょっぱい涙を流しました。