『みず』
象が水辺で水を飲んでいました。
そこへ麒麟が来て言いました。
「象さん、こんなところで会えて、
とっても嬉しいよ」
それは、象の気持ちでした。
麒麟は続けて言いました。
「象さん、君は僕にとっての林檎だよ」
象は、何が何だか分かりませんでした。
「林檎はなかなか食べられないんだ。
だから、たまに食べることができると、
とっても幸せな気持ちになるんだよ」
そう言い残すと、
麒麟は仲間の元へと帰って行きました。
麒麟は毎日水を飲みます。
象も毎日水を飲みます。
象は思いました。
僕、水になりたいよ。
毎日、君に会いたいよ。
そうして象は、
水よりも少しだけしょっぱい涙を流しました。