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『しんじつの ともだち』


ある はるのひ たねうりの おじさんが いいました。

「めずらしい たねが あるけれど いらないかい」

「おいしいの?」

と りすは たずねました。

「たべるんじゃ ないんだよ。 はなに そだてるのさ」

「きれいなの?」

「わしも まだ みたことは ないよ。 おまえさんが そだてて みせてくれないかい」

「でも たねなんて ぼく たべちゃうよ」

しんぱいそうに りすは こたえました。 おじさんは おどろいて いいました。

「たべるなんて とんでもないよ! これは ほんとうに めずらしい しんじつの はなの たねなんだ」

「しんじつの はな?」

「ああ、そうだよ。 じぶんで そだてられるか しんぱいなら ともだちに たのめば いいさ。 しんじつの ともだちに」

「しんじつの ともだちなんて ぼく いないよ」

「だったら このはなが であわせてくれるかも しれないよ」

おじさんは いってしまいました。 りすは しんじつの たねが どんなあじなのか きになって きになって とてもじゃないけど そだてられないと おもいました。 だけど だいじなたねを あずけられる しんじつの ともだちが いないから ふうせんに たねと てがみを つけて とばしました。


『ぼくの しんじつの ともだちへ

 これは しんじつの はなの たねです。 とても だいじな たねなのに りすの ぼくは たべてしまいそうだから きみが そだてて ぼくに みせてください。

 きみの しんじつの ともだち りす』


ながい じかん まったけれど しんじつの はなを みせてくれる しんじつの ともだちは やってこなくて りすは とうみんの じゅんびを することに しました。

じゅんびが おわっても しんじつの ともだちは こなくて りすは とうみんすることに しました。

ふかいふかい ねむりに はいったころ ものおとが しました。

コンコン

どあを たたく おとの ようです。

コンコン

どあを たたく おとです。

「ねえ りすくん。 きみの しんじつの ともだちだよ」

りすは びっくりしました。

「しんじつの はなを もってきたよ。 しんじつの はなは さむい ふゆにしか さかなくて じかんが かかって しまったんだ」

りすは さむい そとにいる しんじつの ともだちを すぐに あたたかい へやに いれてあげたいと おもったのに とうみんしていたら なんだか からだが おもたくって からだが なかなか うごきません。 おおきな こえも でてくれません。

「…りすくんの おうちは ここじゃ ないのかもな」

しんじつの ともだちは いってしまった ようです。 べっどから おきられないままの りすくんは かなしくて かなしくて かなしくて あれは ぼくの しんじつの ともだちじゃ なかったんだ とおもいました。

そして、もういっかい めを とじて とうみんの つづきをして しんじつの はなの ゆめを みようと おもいました。