1122

4匹のおたまじゃくしがいました。
花子ちゃんと太郎くんと
おたまじゃくしちゃんとおたまじゃくしくんです。


花子ちゃんは太郎くんが好きで、
太郎くんは花子ちゃんが好きで、
おたまじゃくしちゃんはおたまじゃくしくんが好きで、
おたまじゃくしくんはおたまじゃくしちゃんが好きです。


4匹のおたまじゃくしは、
少しずつあしが出て、いつのまにかあしが揃って、
4匹のかえるになりました。


かえるになった今も、
花子ちゃんは太郎くんが好きで、
太郎くんは花子ちゃんが好きで、
かえるになったおたまじゃくしちゃんは
かえるになったおたまじゃくしくんが好きで、
かえるになったおたまじゃくしくんは
かえるになったおたまじゃくしちゃんが好きでした。


かえるになったおたまじゃくしちゃんが言いました。
「おたまじゃくしくん、かえるくんって呼んでいい?
 私のことはかえるちゃんって呼んでね」
かえるになったおたまじゃくしくんは驚いて言いました。
「何を言っているんだい!僕はおたまじゃくしだよ。
 そして僕はおたまじゃくしちゃんが好きなんだよ」


おたまじゃくしちゃんは笑って言いました。
「私は私のままよ。だけどかえるになったのよ。
 あなたもかえるになったのよ」
おたまじゃくしちゃんのその言葉に首を振りながら、
おたまじゃくしくんはぴょんぴょん去って行きました。


かえるになったおたまじゃくしくんは、
みんなにはもう会うこともなくひとりで泳いでいました。
その脇を1匹のおたまじゃくしが泳いでいきました。
女の子のおたまじゃくしでした。


「きみをおたまじゃくしちゃんと呼んでもいいかい?」
かえるになったおたまじゃくしくんは聞きました。
「いいわよ、かえるさん」
女の子が答えました。
おたまじゃくしくんはまた驚いて言いました。
「おたまじゃくしちゃん、
 僕のことはおたまじゃくしくんと呼んでね」
「あなたはかえるよ。私もかえるになるのよ」
女の子は笑いながら、どこかに行ってしまいました。


「僕はおたまじゃくしなのになぁ」
そうつぶやくおたまじゃくしくんのその姿は、
どこからどう見てもかえるなのでした。