986 おとうさ
「おとうさん、あのほしがほしい」
「星?」
「そらでひかってる、いちばんあかるいのがいい」
「輝かない星は、嫌いかい?」
「ほしは、かがやいているものでしょう?」
「輝かない星もあるよ」
「そんなほし、いやだよ」
「地球は嫌いかい?地球も星なんだよ」
「かがやいていないよ。あのほしが、いいんだ」
「あの星は実は地球よりも大きいんだ。持っては来れないよ」
「じゃあ、つれてって!」
「でも、あの星に、母さんはいないよ。それでもいいのかい?」
「…いやだ」
「そうだろう。地球にしか母さんはいないんだよ」
「おかあさんが、いい。このほしが、いい」
「さあ、母さんが待ってる。早くうちに帰ろう」