967 にわとり
にわとりの夫婦に卵が生まれました。
おんどりは嬉しくて嬉しくてたまりません。
おんどりの喜びようを見て、
めんどりも目を細くしました。
おんどりが言いました。
「もうすぐ、父さん母さんになるんだなぁ」
「ええそうね」
めんどりは答えました。
「ああ、待ち切れない!
母さん、卵をもっと強く抱きしめてくれ。
早くその子に会いたいんだよ!」
「そんな事したら、この子が壊れてしまうわ」
「そうかそうか、それはいけない」
「ああ、待ち切れない!
母さん、卵をもっと熱く温めてくれ。
早くその子に会いたいんだよ!」
「そんな事したら、この子が煮えてしまうわ」
「そうかそうか、それはいけない」
「ああ、待ち切れない!
母さん、卵をもっと…」
「ねぇ、あなた。
この子に会いたいと思うなら、
待ってあげるのが一番よ。
ゆっくりゆっくり待ってあげるの」
「そうかそうか」
おんどりはゆっくりと待つ事にしました。
卵の中の子が早く外に出たがってくれたらいいな、
と思いながら。