933 カメレオ

『カメレオン』

僕はカメレオン。
体の色がくるくる変わる。


青空の中では青色に、
夕陽が射せば赤色に、
森の中では深い緑色に。


一体、僕は何色なんだ?
本当の僕は何色なんだ?


自分で自分がわからない。


「ねぇ、蜘蛛くん、僕は何色だい?」
「今は日陰に居るから、灰色だね」


「ねぇ、小鳥さん、僕は何色だい?」
「今は木の幹に居るから、茶色よ」


「ねぇ、牛さん、僕は何色だい?」
「カメレオンくん、居るのかい?
 牧草に紛れてわからないよ。
 きっと今は、緑色だよ」


「……ねぇ、モグラくん、僕は何色だい?」
「カメレオンくん、僕には見えないよ。
 あまりにも周りが明る過ぎて。
 君の色、わからないけど、
 君が何色でも僕は好きだよ」


モグラにそう言われて、
カメレオンは赤くなりました。
周りに赤い物は何一つなかったけれど、
赤くなってしまいました。