741 くまさん

『くまさん』

くまは こわい どうぶつです。
こわい こわーい どうぶつです。


もりに いっぴきの くまが すんでいました。
くろくて おおきな おとなの くまです。


あさ はやく おきると、
くまは いつものように さんぽに でかけました。
ぽかぽかして、とっても いい てんきです。


くまが あるいていると、
きれいな おはなばたけが ありました。
そこで、こどもの うさぎたちが、
おいかけっこを していました。
うさぎたちは しあわせそうでした。


そんな うさぎたちを みて、
くまは、
「がおーーーーっ!!」
と ほえました。
おおきな こえです。
こわい こえです。
うさぎたちは おどろいて、
おおいそぎで にげていきました。


また、くまが あるいていると、
しかの おかあさんが、なにか いっています。
「ぼうや!!わたしの ぼうや!!」
 みてみると、こどもの しかが、
いけに おぼれています。


そんな しかの おやこを みて、
くまは いけに ちかづいていきました。
どんどん どんどん ちかづいていきました。


しかの おかあさんが、
それに きづいて さけびました。
「ああ、くまさん!!
 その こは わたしの だいじな こなの。
 たべてしまわないで!!!」


くまは どんどん いけに むかいました。
そして、いけの みずを のみはじめました。


「がぶがぶ
 がぶがぶ
 がぶがぶがぶ」


そうやって、いけの みずを ぜんぶ のみほすと、
くまは いえへと かえっていきました。


いけの みずが なくなったので、
こどもの しかは ぶじでした。
しかの おかあさんが いいました。
「よかった、
 くまさんが ぼうやを たべてしまわなくて!
 くまさんは のどが かわいていたのね」
それを きいた こどもの しかが いいました。
「ちがうよ、
 くまさんは ぼくを たすけてくれたんだよ」


そうです、くまは こどもの しかを たすけるために、
いけの みずを ぜんぶ のんでくれたのです。


しかの おやこは、
くまに おれいを いいに いくことにしました。


しかの おやこが あるいていると、
どこからか こえが きこえます。
「ねぇ、しかさん」
それは、はなの こえでした。


「さっき、くまさんの ぐあいが わるそうだったけど、
 なにか あったのかしら?」
しかの おやこは、
くまが ぼうやを たすけてくれたことを、
はなに おしえました。
くまは みずを たくさん のみすぎて、
おなかを こわして しまったようです。


はなは いいました。
「わたしを つんで、くまさんへの おみまいにして」
しかの おかあさんが こたえました。
「あなたを つんだら、あなたは かれてしまうわ」
はなは わらって いいました。
「ここにいても、いつか かれてしまうの。
 だから、くまさんの ところへ いきたいの。
 きょう、くまさんは、
 わたしの ことも たすけてくれたのよ」


この はなは、うさぎたちが おいかけっこをしていた
おはなばたけの はなでした。
うさぎたちが はなを ふみつけていたので、
くまは うさぎたちに ほえたのでした。


くまは やさしい どうぶつです。
とても やさしい どうぶつです。


いま、くまは いえで うんうんと うなっています。
もうすぐ、しかの おやこが、
きれいな はなを もって やってきます。