0079

「折角持っている其の種を、
 如何して君は蒔かないの?」


「……僕、怖いんだ。
 僕は、此の種が、何の種なのか知らないんだよ。
 綺麗な花が咲くかもしれないし、
 美味しい実が生るのかもしれない。
 だけど、だけど本当は、
 咲いちゃいけない花かもしれないんだ」


「咲いちゃいけない花なんて在るの?」


「……」


「そんな花、僕は知らない」


−−−−


ケシの花だって、
咲いてはいけない訳は無い。
其の果実から、
人間がアヘンを採らなければ良いだけの事。